高齢のご家族が退院することになったとき、「退院後の生活をどう支えるか」は大きな不安のひとつです。入院中に身体機能が低下する「廃用症候群」は1週間の臥床で筋力が10〜15%低下するとされ、退院時には入院前と同じ生活が送れないケースが少なくありません。このチェックリストでは、退院前カンファレンスでの確認事項から自宅の受入準備、訪問看護や介護サービスの手配、退院後のフォローアップまで、退院前後にやるべきことを時系列で整理しています。
退院準備で特に重要なのが、退院前カンファレンス(退院時共同指導)への参加です。医師・看護師・リハビリスタッフ・医療ソーシャルワーカー(MSW)・ケアマネジャー・訪問看護師などが一堂に会し、退院後の療養方針・服薬管理・注意事項・必要な在宅サービスについて話し合います。厚生労働省の在宅医療推進施策に基づき多くの病院で実施されており、退院予定日の1〜2週間前が目安です。疑問点を事前にメモしておき、この場で遠慮なく確認することが、スムーズな在宅移行の第一歩になります。
要介護認定が未申請の場合は、入院中に市区町村の窓口または地域包括支援センター経由で申請を進めましょう。認定には原則30日程度かかりますが、介護保険法に基づき申請日にさかのぼってサービス利用が可能で、退院日に暫定ケアプランでサービスを開始することもできます。介護用ベッド・車いすなどの福祉用具レンタルや手すり設置の住宅改修は、ケアプランと連動して退院日までに準備を完了させる必要があるため、退院日が決まったらすぐケアマネジャーと調整を始めることが鉄則です。
特に見落としがちなのが、退院直後の「在宅療養クライシス」対策です。環境の変化によるせん妄、服薬の自己管理でのミス、転倒リスクの急上昇は退院後1週間に集中します。緊急時の連絡先(かかりつけ医・訪問看護ステーション・24時間対応の#7119など)を冷蔵庫など目立つ場所に貼っておきましょう。離れて暮らすご家族とチェックリストを共有して「誰がいつ何を担当するか」を見える化し、協力しながら準備を進めることで、高齢者本人も家族も安心して退院日を迎えられます。
退院前後のやるべきことを確認
退院日の1〜2週間前までに病院側と確認すべき項目。カンファレンスは家族1〜2名が同席し、質問事項は事前にメモして臨むと漏れがない
退院前カンファレンスに参加する
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医師・看護師・ケアマネジャー等と退院後の生活について話し合う重要な機会です
退院日・退院時間を確認する
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退院日から介護サービス・訪問看護・福祉用具の搬入が逆算される起点です
退院後の注意事項を確認する
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食事制限・運動制限・禁止事項など、医師の指示をメモしておきましょう
退院時の身体機能を確認する
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入院前より低下したADL(日常生活動作)の把握が、必要な介護サービスと住宅改修の判断材料になります
歩行・トイレ・入浴・食事など、入院前と比べてできること・できなくなったことを把握しましょう
退院後のリハビリ方針を確認する
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自宅でのリハビリ方法や注意点を理学療法士に聞いておきましょう
医療ソーシャルワーカーに相談する
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介護保険の申請・施設の紹介・利用できる制度など、退院後の生活支援を相談できます
退院後の通院・服薬継続のための準備。高齢者は平均5〜6種類の薬を服用するため、一元管理できる仕組みづくりが鍵
退院後の処方薬を受け取る
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退院時に処方される薬の種類・用法・用量を確認しましょう
退院処方は原則14日分程度。次回受診までに切れないか確認を。院外処方箋の場合は有効期限4日以内にかかりつけ薬局で受け取ること
服薬スケジュールを確認する
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高齢者は平均5〜6剤を服用しており、飲み合わせや重複投薬の防止のため一元管理が必要です
朝・昼・夕・就寝前の服用タイミング、食前/食後/食間、粉砕や一包化の可否を病棟薬剤師に確認。服薬カレンダーや一包化サービス(かかりつけ薬局で相談)を活用すると飲み忘れを減らせます。薬の追加・中止は必ず主治医に相談
退院後の通院予約を入れる
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次回の診察日・検査日を確認し、予約しておきましょう
お薬手帳を更新する
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かかりつけ薬局を決める
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自宅近くの薬局で薬の配達サービスを行っている場合もあります
介護保険サービスの調整窓口はケアマネジャー。訪問系・通所系・福祉用具を組み合わせ、退院日からの穴をなくすのが目標
要介護認定を申請する(未申請の場合)
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認定には約30日かかりますが、申請日にさかのぼって介護保険サービスが利用可能になります
入院中に申請可能です。病院の医療ソーシャルワーカーが手続きを支援してくれます。市区町村窓口または地域包括支援センターで相談
ケアマネジャーを選ぶ(未選定の場合)
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地域包括支援センターや病院のソーシャルワーカーに紹介してもらえます
ケアプランを作成・見直す
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退院後の状態に合わせて必要なサービスを組み込みましょう
訪問看護の手配をする
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医療的ケア(服薬管理・傷の処置・体調観察・医療機器管理等)が必要な場合に。主治医の訪問看護指示書が必要で、介護保険または医療保険での利用となります。24時間対応体制の有無を事業所選定時に確認を
訪問介護の手配をする
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食事・入浴・排泄の介助や家事援助が必要な場合に
訪問リハビリの手配を検討する
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退院後も自宅でリハビリを続ける場合に
デイサービス・デイケアの利用を検討する
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日中の見守り・入浴・リハビリが必要な場合に
福祉用具のレンタル・購入を手配する
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介護用ベッド・車いす・歩行器など、退院日までに必要な用具を準備しましょう
特殊寝台・車いす・歩行器などは介護保険のレンタル対象(原則要介護2以上。軽度者は例外給付の要件あり)。機種選定は主治医・ケアマネ・福祉用具専門相談員と相談のうえ決定を。退院日に間に合わせるには1週間前までに手配開始
在宅医療機器の使い方を習得する
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在宅酸素・吸引器・経管栄養ポンプなど医療機器を使う場合、家族が操作・トラブル対応を習得する必要があります
退院前に病棟看護師から実演指導を受け、家族も実際に触って練習を。機器トラブル時の24時間連絡先(業者・訪問看護ステーション)を控え、使用可否や機種変更は必ず主治医に相談してください
退院前訪問指導を活用すると看護師・リハビリスタッフが自宅を確認してくれる。転倒リスクの9割は寝室・トイレ・浴室・廊下
寝室の環境を整える
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介護用ベッドの搬入、ベッド周りの動線確保、足元灯の設置など
必要な手すりを設置する
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介護保険の住宅改修費(上限20万円・1割〜3割負担)で設置可能。ケアマネジャーの事前申請が必要です
トイレ・浴室・廊下・玄関など、移動経路に手すりがあるか確認しましょう
転倒の危険がある場所を対策する
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段差・電源コード・すべりやすいカーペットなどを確認・対策しましょう
日用品・介護用品を買い揃える
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おむつ・おしりふき・口腔ケア用品・とろみ剤など、必要なものを揃えましょう
退院後の食事を準備する
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食事制限がある場合は医師・管理栄養士の指示に従いましょう。配食サービスの利用も検討できます
室温を快適に調整する
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退院日に合わせて、部屋を適温に整えておきましょう
当日は移動と書類受取が中心。診療情報提供書・看護サマリーは次の医療機関や訪問看護が必ず必要とするため取りこぼし厳禁
退院時の移動手段を手配する
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自家用車・介護タクシー・福祉車両など、身体状態に合わせた移動手段を確保しましょう
入院費の精算をする
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退院時の書類を受け取る
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診療情報提供書・看護サマリーは次の医療機関や訪問看護で必須。受け取り忘れると再発行に時間がかかります
退院証明書・診療情報提供書・看護サマリー・お薬手帳・介護保険主治医意見書など、もらい忘れがないか確認
入院中の私物をすべて回収する
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病棟スタッフへの挨拶
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同じ病院に再入院・外来通院する可能性もあり、顔の見える関係を築いておくと安心です
退院後1週間は最も体調が崩れやすい時期。食事量・睡眠・服薬・排泄の記録を残し、小さな異変を早めに共有する
退院初日の夜間の様子を確認する
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環境の変化で不安定になることがあります。初日は特に注意深く見守りましょう
服薬が正しくできているか確認する
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ケアマネジャーに退院を報告する
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介護サービスの開始日を調整してもらいましょう
退院後の体調変化を記録する
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体温・食事量・排泄・睡眠の状態を記録しておくと、次の通院時に役立ちます
緊急時の対応方法を確認する
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急変時にどこに連絡するか、家族全員で確認しておきましょう
医師・看護師・リハビリ・MSW・ケアマネが同席する場で、食事/運動制限・服薬管理・医療処置・急変時連絡先の4点を家族1〜2名で確認。疑問点は事前にメモして持参
入院前と比べて歩行・トイレ・入浴・食事で低下した動作を把握し、訪問看護・訪問介護・通所リハビリの優先度を決定。在宅医療機器の有無も含めてケアマネと整理
未申請なら入院中に市区町村窓口または地域包括支援センターで申請。認定は約30日かかるが暫定ケアプランで退院日からサービス開始が可能
寝室・トイレ・浴室・廊下の段差・滑り・暗さを改善。手すり設置は介護保険の住宅改修(上限20万円)を活用し、福祉用具は1週間前までに搬入
かかりつけ医・訪問看護24時間窓口・救急安心センター #7119 を冷蔵庫に貼り、家族間で観察ポイント(食事量・睡眠・服薬)を分担
退院後の療養方針(食事制限・運動制限・禁止事項)、必要な医療処置と介護サービス、通院の頻度、服薬の管理方法、急変時の連絡先、リハビリの継続方法の6点を中心に確認しましょう。事前に家族で「聞きたいことリスト」を作り、当日は家族1〜2名が同席してメモを取るのが理想です。病院によって対応が異なるため、医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談すれば日程調整もしてもらえます。質問は遠慮せず、納得できるまで確認することが大切です。
要介護認定を受けていれば、退院日に合わせてサービスを開始できるよう、入院中にケアマネジャーとケアプランを調整しておきましょう。まだ認定を受けていない場合は、入院中に市区町村窓口または地域包括支援センター経由で申請できます。認定結果が出る前でも暫定ケアプランでサービス利用を開始でき、認定後に申請日にさかのぼって介護保険が適用されます。病院の医療ソーシャルワーカーが手続きを支援してくれるので、早めに相談してください。
まずは退院時に渡された連絡先(かかりつけ医・訪問看護ステーション)に電話しましょう。夜間や休日で受診すべきか迷う場合は、救急安心センター事業 #7119(対応地域のみ)に相談できます。発熱・息苦しさ・意識の混濁・強い痛み・転倒による骨折疑いなど明らかな急変時は迷わず119番に通報しましょう。退院前に緊急連絡先と受診目安を冷蔵庫など目立つ場所に貼っておくと、家族も慌てずに対応できます。
退院後も訪問リハビリやデイケア(通所リハビリ)で継続的にリハビリを受けられ、ケアプランに組み込めば介護保険が適用されます。退院前カンファレンスで理学療法士・作業療法士に自宅でのリハビリ方法を聞き、日常生活の中でできる運動(立ち座り・歩行・握力訓練など)を教えてもらいましょう。退院後1〜2週間は特に筋力低下が進みやすいため、家の中で座りきりにならないよう短時間でも体を動かす機会を作ることが重要です。
食事制限(塩分・水分・糖質・嚥下調整食など)がある場合は、退院時に管理栄養士から具体的な指導を受けましょう。嚥下機能が低下している場合はとろみ剤の使い方や一口量も確認が必要です。自宅での調理が難しい場合は配食サービスも選択肢で、自治体の高齢者向け配食サービス・介護保険外の民間サービス・医療食宅配などがあります。地域包括支援センターに相談すれば地域の選択肢を紹介してもらえます。
要介護2以上であれば、介護保険の福祉用具貸与(レンタル)で1割〜3割負担で利用できます。ケアマネジャーにケアプランへの組み込みを依頼し、福祉用具専門相談員が自宅を訪問して適切な機種を選定してくれます。退院日に間に合わせるには遅くとも1週間前までに手配を開始しましょう。要介護1以下でも特定福祉用具(ポータブルトイレ・入浴用品など)は購入補助の対象になる場合があるため、必ずケアマネジャーに相談してください。
はい、List Withでチェックリストを作成してURLを家族に送れば、離れて暮らすご家族ともリアルタイムで進捗を共有できます。「病院関係は長男、自宅の環境整備は次女、ケアマネ連絡は配偶者」といった分担を見える化でき、誰がどこまで進めたかを確認し合えます。退院後も体調の記録や通院予定の管理に使い続けられるため、在宅介護が始まってからも役立ちます。
退院前のカンファレンスから当日の手続き、退院後のフォローアップまで、時系列で必要な準備を整理。何をいつやるべきかが一目でわかります。
チェックリストを家族と共有すれば、離れて暮らすご家族とも準備状況をリアルタイムで確認。役割分担しながら退院準備を進められます。
退院前カンファレンスや病院での手続き中も、スマホでリストを確認。聞き忘れや準備漏れを防げます。