国民生活センターには賃貸住宅の原状回復に関する相談が年間1万件以上寄せられています。トラブルの大半は「入居時に部屋の状態を記録していなかった」ことに起因し、証拠がないまま数万〜数十万円の原状回復費用を請求されるケースが後を絶ちません。逆に言えば、入居前に傷や汚れを写真付きで記録しておくだけで、退去時に「元からあった損傷」と客観的に証明でき、不当な請求の大部分を防げます。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常使用による経年劣化(壁紙の日焼け、家具設置による床のへこみ、画鋲やピンの穴など)は原則として貸主負担と定められています。一方、タバコのヤニによる壁紙の変色、ペットによる柱の傷、引っ越し時の不注意で付けた傷などは借主負担です。この基準を把握しておくことで、退去時に根拠を持って交渉できます。
入居時のチェックで特に見落としやすいのが、クローゼット内部の壁紙のはがれ、洗面台下の配管まわりの水染み、ベランダの排水口の詰まりです。天井の隅のシミは雨漏りの兆候であることも多く、放置すると退去時に借主の責任を問われかねません。キッチンのコンロ下や換気扇の油汚れも、入居時点の状態を記録しておかないと「借主の使用による汚れ」とみなされやすいポイントです。
チェックのタイミングも重要です。入居時は鍵の受け渡し直後、荷物を搬入する前がベスト。家具を配置した後では壁や床の状態が確認しづらくなります。退去時は荷物をすべて運び出した後、管理会社との引き渡し前に確認しましょう。チェック結果は日付入りの写真とともにメールで管理会社に共有し、受領確認を取っておくと万全です。
入居・退去を選んで確認項目をチェック
壁紙の傷・汚れは原状回復費用の大部分を占めるポイント。各部屋・クローゼット内部も忘れずに確認しましょう
壁の傷・へこみ
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画鋲跡、家具による傷がないか確認
壁紙の汚れ・シミ
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タバコのヤニ、カビ跡などをチェック
壁紙のはがれ・浮き
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継ぎ目やエアコン周辺で起きやすい。入居時に記録がないと退去時に借主負担になることも
天井のシミ・変色
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雨漏りの形跡がないか確認
クローゼット・押入れ内部
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内部の壁紙はがれ、棚板の傷、カビの有無を確認。見落としやすいポイント
フローリングの傷は家具設置跡なら経年劣化扱い。引きずり傷やへこみは借主負担になりやすいため入居時の記録が重要です
床の傷・へこみ
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家具の跡やひっかき傷がないか確認
床の汚れ・変色
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日焼けによる変色は経年劣化で貸主負担。飲み物のシミなどは借主負担の可能性あり
床のきしみ・浮き
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歩いたときに異音がしないか確認
畳の状態(和室がある場合)
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畳の焼け・ほつれ・へこみを確認。表替えは6年が目安で経年劣化扱い
水漏れやカビは退去時のトラブルになりやすい箇所。蛇口の開閉だけでなくシンク下・配管まわりも必ず確認しましょう
キッチン水栓の動作・水漏れ
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温水・冷水の切り替えとシンク下の配管からの水漏れを確認
浴室の排水・換気扇
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排水の流れと換気扇の動作を確認
トイレの水流・水漏れ
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タンクからの水漏れや便座のぐらつき、ウォシュレットの動作も確認
浴室のコーキング(シーリング)
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カビや劣化による隙間がないか確認
洗面台の状態
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ひび割れ、水漏れがないか確認
設備の不具合は入居後2週間以内に管理会社へ報告するのが一般的。報告が遅れると借主責任とみなされるリスクがあります
ドア・引き戸の開閉
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スムーズに開閉するか、きしみがないか
窓の開閉・鍵
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全ての窓が正常に開閉し、鍵がかかるか確認
コンセント・スイッチの動作
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全箇所で通電するか確認
インターホンの動作
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呼び出し音・通話・モニター映像が正常に機能するか確認
火災報知器の有無
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設置義務があるため、有無を確認
エアコンの動作確認
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冷暖房の切替、リモコン動作、異音・異臭がないかチェック
換気扇・24時間換気の動作
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キッチン・浴室・トイレの換気扇が正常に回るか確認
ベランダ・バルコニーの状態
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排水口の詰まり、手すりのぐらつき、床面のひび割れを確認
写真撮影・鍵の確認・管理会社への報告など、チェック後に必要な手続き。記録は退去まで保管しましょう
傷・汚れの写真撮影
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日付入りの写真を撮って証拠を残す
鍵の本数確認
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受け取った鍵の本数を記録
電気・ガス・水道のメーター確認
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入居時の数値を記録しておく
管理会社への不具合報告
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入居時に見つけた不具合は速やかに報告
入居時状態確認書の作成
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管理会社指定の書式がなくても自作の記録を日付入りで作成し双方で保管
入居時と退去時で確認すべき項目が異なります。タイミングを選択すると、メーター確認や鍵返却など該当する項目が自動で表示されます
玄関から奥の部屋へ順番に回り、壁紙の傷、床のへこみ、水栓の水漏れなどをチェック。クローゼット内部やベランダ排水口も忘れずに
近接写真と全体写真の2枚セットで撮影。日付が自動記録されるスマートフォンで十分。暗い場所はフラッシュを使い、動画も併用すると確実
写真付きのチェック記録をメールで管理会社に送付し、受領確認を取る。入居時の記録は退去まで保管し、退去時の原状回復交渉に備える
鍵の受け渡し後、荷物を搬入する前に行うのがベストです。家具や家電を配置した後では壁や床の状態が確認しづらくなり、既存の傷を見落とすリスクが高まります。理想的には入居日の午前中に2〜3時間確保し、自然光のもとで確認すると傷や汚れが見つけやすくなります。チェック結果は日付入りの写真とともに記録し、その日のうちに管理会社へメールで共有しておきましょう。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常使用による経年劣化(壁紙の日焼け、家具設置によるカーペットのへこみ、画鋲・ピンの穴など)は原則として貸主負担とされています。一方、タバコのヤニによる壁紙の変色、ペットによる柱や壁の傷、飲み物をこぼしたまま放置したシミなどは借主の故意・過失として負担が求められます。壁紙は6年で残存価値1円とされるため、長期入居ほど借主負担は軽減される仕組みです。
傷や汚れの近接写真(10〜20cm)と、その場所がわかる引きの全体写真の2枚をセットで撮影するのが基本です。スマートフォンのカメラで日時が自動記録されるので専用機は不要です。全部屋の四方の壁・床・天井を引きで撮影しておくと、後から「この傷はどの部屋のどこか」を特定しやすくなります。暗い場所ではフラッシュを使い、可能であれば動画も撮っておくとより確実です。
法律上の義務はありませんが、立ち会いをすることで、その場で傷や汚れの責任範囲を管理会社と合意できるため、後日の請求トラブルを大幅に減らせます。立ち会い時には入居時のチェック記録を持参し、「この傷は入居前からあった」と示せるようにしておきましょう。立ち会いが難しい場合は、退去直前の部屋の状態を写真・動画で記録し、管理会社にメールで送付しておくと代替の証拠になります。
入居時のチェック結果は管理会社に書面やメールで共有しておくと、退去時の原状回復トラブル防止に非常に有効です。管理会社が用意する「入居時状態確認書」がある場合はそれに記入し、ない場合は自作のチェックリストに写真を添付して提出しましょう。送付時はメールで受領確認を取り、返信を保存しておくことが大切です。提出した記録は退去まで必ず保管してください。
ワンルーム〜1Kなら1〜1.5時間、2LDK〜3LDKなら2〜3時間が目安です。二人で手分けすれば時間を半分に短縮できます。壁・床・水回りの順に部屋を一周しながら確認していくと効率的です。最初に全部屋の窓を開けて換気しながら進めると、カビや排水の異臭にも気づきやすくなります。時間に余裕がない場合でも、最低限の写真撮影と水回りの動作確認は行いましょう。
一般的には退去後1〜2ヶ月以内に精算書が届き、原状回復費用を差し引いた残額が返還されます。ガイドラインでは「速やかに精算する」とされていますが、具体的な期限は契約書に記載されていることが多いので確認しておきましょう。精算書の内容に納得できない場合は、入居時の記録を根拠にして交渉できます。それでも解決しない場合は、自治体の無料相談窓口や国民生活センターに相談する方法もあります。
はい、ほとんどの賃貸契約では借家人賠償責任保険への加入が条件になっています。入居時のチェックとあわせて、火災保険の加入状況と補償内容を確認しておきましょう。保険料は年間4,000〜8,000円程度が一般的です。退去時に不注意で壁や床に大きな損傷を与えてしまった場合、保険で原状回復費用がカバーされるケースもあるため、補償範囲を把握しておくことが重要です。
入居時はメーター確認や不具合報告、退去時は掃除確認や鍵返却など、タイミングに応じた確認項目だけが表示されます。共通項目と合わせて漏れなくチェックできます。
原状回復トラブルで争点になりやすい壁紙の傷、床のへこみ、水回りのカビなど、見落としやすいポイントをカテゴリ別に整理。クローゼット内部やベランダ排水口まで網羅しています。
リストを共有すれば「水回りは自分、壁と床はパートナー」と場所別に分担可能。2LDKでも1時間程度で全室の状態確認が完了します。