ホスピス・緩和ケア病棟への入院が決まると、「一般病棟の入院と何が違うのか」「最期の時期をどう過ごしてほしいか」と、ご本人もご家族も複雑な思いの中で準備を進めることになります。緩和ケア病棟は、治癒を目的とした積極的治療ではなく、痛み・呼吸困難・倦怠感など身体的苦痛の緩和と、精神的・社会的・スピリチュアルな支えを重視する病棟です(日本ホスピス緩和ケア協会・日本緩和医療学会の基本理念)。そのため持ち物も、治療に必要なものに加えて「ご本人らしく穏やかに過ごすためのもの」を意識して揃えることが、一般入院との最大の違いです。
入院手続きには主治医からの 診療情報提供書(紹介状) が必須で、多くの施設では事前の緩和ケア外来受診や面談・契約を経てから入院日が決まります。事前指示書(リビングウィル)やACP(アドバンス・ケア・プランニング/厚生労働省が推進する「人生会議」)で本人の意思をまとめている場合は、コピーを必ず持参し医療チームと共有します。衣類は点滴や処置のしやすい 前開きパジャマを3セット 程度、転倒防止のため かかとのある上履き(スリッパは不可の施設が多い)を用意します。ベッド上で過ごす時間が長くなるため、ストロー付きコップ は横になったまま水分が取れて重宝し、乾燥対策の保湿クリームやリップクリームも日々の快適さに直結します。
緩和ケア病棟で特に忘れがちなのが、こころの安らぎにつながるパーソナルアイテム です。家族写真、好きな音楽を入れたスマホとイヤホン、使い慣れたブランケット、お守りや数珠・聖書など宗教的に大切にしているもの、趣味の本や塗り絵など。多くの施設で病室を自宅のように装飾することが歓迎される一方、医療的物品(酸素濃縮器・電気毛布・アロマディフューザー等)の可否は施設ごとに異なる ため、入院前の面談時に必ず確認してください。緩和ケア病棟入院料は健康保険が適用され高額療養費制度の対象ですが、差額ベッド代や寝衣レンタル代など保険外費用は施設による幅があり、最新情報は施設・加入保険者への確認が必須です。
準備品は多岐にわたりますが、カテゴリごとに分けて一つずつチェックしていけば漏れを防げます。離れて暮らす家族とも共有しながら進めることで、精神的負担を分担しつつ、ご本人の望む過ごし方を中心に据えた入院準備が整えられます。
家族と共有して準備を分担しましょう
紹介状・保険証・事前指示書など、緩和ケア病棟への入院手続きと医療方針の共有に必要な書類群。発行に時間がかかるもの(紹介状・限度額認定証)から先に準備を進めるのが効率的
診療情報提供書(紹介状)
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緩和ケア病棟への入院には主治医からの紹介状が必須。病歴・治療経過・現在の症状を医療チームに正確に引き継ぐための最重要書類です
発行に1〜2週間かかる場合があるため、入院検討を始めたら早めに主治医へ依頼を
健康保険証・後期高齢者医療証
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入院手続きに必須。75歳以上は後期高齢者医療被保険者証、高齢受給者証の対象者は両方持参します
限度額適用認定証
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高額療養費制度の現物給付を受けるための書類。事前に加入している健康保険(協会けんぽ・国保・組合健保等)へ申請しておくと、窓口支払いが自己負担限度額までに抑えられます
マイナ保険証を利用できる施設では認定証の提示が省略できる場合あり。制度は改定の可能性があるため最新情報は加入保険者に確認
事前指示書・ACP(人生会議)の記録
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延命治療・心肺蘇生・鎮静などに関する本人の意思を医療チームに伝える重要書類。厚生労働省が推進する「人生会議」の記録がある場合も持参します
コピーを持参し、原本は自宅保管が安心。家族間で内容を共有しておくと入院後の意思決定がスムーズ
お薬手帳・服用中の薬
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現在服用中のすべての薬を薬袋ごと持参。お薬手帳で処方内容・アレルギー歴・副作用歴を正確に引き継げます
持参薬の継続可否は施設ごとに判断が異なるため、残薬も含めて一度すべて持ち込みを
診察券
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入院先施設の診察券。他院の診察券もまとめて持参すると既往歴の確認がスムーズです
印鑑(認印)
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入院契約書・同意書・手術や処置の同意書への捺印に使用。シャチハタ不可の施設が多いため朱肉で押せる認印を
緊急連絡先リスト
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キーパーソンとなる家族の連絡先、他に連絡してほしい親族・知人の順序を明記。夜間・急変時の連絡優先順位を決めておくとスタッフが迷いません
用紙1枚にまとめて施設に提出する形式の場合が多い
処置のしやすい前開きパジャマと転倒防止の上履きが中心。寝衣やタオルは多くの施設でレンタル可。洗濯頻度と費用で「持参かレンタルか」を選択
パジャマ・寝衣(前開きタイプ)
3セット
点滴・採血・聴診・清拭などの処置がしやすい前開きタイプが必須。ゆったりしたサイズで、洗濯のしやすい綿やガーゼ素材が快適です
寝衣レンタル(CSセット等)を日額定額で利用できる施設が多い。洗濯の手間と費用を比較して選ぶ
下着
5枚
洗濯の頻度を考えて5枚前後。吸湿性のよい綿素材や、失禁対策の介護用下着も選択肢になります
カーディガン・羽織もの
2
病室の空調は一定でも体感温度は日によって変わります。前開きで着脱しやすく、洗いやすい素材が便利
上履き(かかとのあるもの)
1
ベッドから立ち上がったときの転倒防止のため、スリッパではなくかかとのある滑りにくい靴を。マジックテープ式なら足のむくみにも対応できます
多くの施設でスリッパ・サンダル類は安全上持ち込み不可。履き慣れた運動靴タイプが安心
口腔ケアと保湿は緩和ケアの QOL に直結する重要ポイント。肌が敏感になる時期のため低刺激・無香料タイプを選ぶと同室者への配慮にもなる
歯ブラシ・歯磨き粉・口腔ケア用品
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緩和ケアでは口腔内を清潔に保つことで誤嚥性肺炎や口内トラブルを予防します。飲み込みが弱い方はスポンジブラシや保湿ジェルも検討を
タオル・バスタオル
5枚
洗面・清拭・入浴介助など使用頻度が高いため多めに。バスタオル2〜3枚+フェイスタオル3枚が目安
寝衣レンタルと同じセットでタオル類もレンタル可能な施設が多い
シャンプー・ボディソープ
1
肌質に合ったものを持参すると入浴・清拭時の快適さが保てます。敏感肌になっていることが多いため低刺激・無香料タイプが無難
施設に備え付けがある場合も。使い慣れたものがあれば持参
保湿クリーム・リップクリーム
1
病室は乾燥しやすく、全身の保湿・唇のひび割れ防止に必須。無香料タイプが周囲への配慮になります
入れ歯ケース・洗浄剤
1
入れ歯の紛失はトラブル件数が多く、食事中以外はケースで保管が鉄則。ケースに氏名を記入しておきましょう
入れ歯を使用している場合のみ
髭剃り・電気シェーバー
1
身だしなみを整えることは気分の安定にもつながります。電気式は肌を傷つけにくく介助も容易
T字カミソリは施設により持ち込み制限あり(安全上の理由)。電気シェーバー推奨
ベッド上での生活を快適にする実用品。ストロー付きコップや延長コードなど病室の設備を補う小物が中心。電気毛布・ポット等の高電力機器は持ち込み制限あり
ティッシュペーパー(ボックスタイプ)
2箱
痰・鼻水・口周りの拭き取りなど使用頻度が高く、ボックスタイプが取り出しやすい。在庫を切らさないよう予備を常備
ウェットティッシュ・清拭タオル
2
手指や口周りをすぐ拭ける。体調が悪く洗面所まで行けない時の部分清拭にも使えます
ノンアルコール・無香料タイプが肌に優しい
ストロー付きコップ・吸い飲み
1
横になったまま水分補給ができる必需品。首を起こすのが辛い時期に備えて準備しておくと安心
シリコン製のストローは噛んでも折れず繰り返し使える
延長コード・電源タップ
1
病室のコンセントはベッドから遠いことが多く、スマホ充電・音楽プレーヤー・電気カミソリなどに必須
電気毛布・電気ポット等の高電力機器は持ち込み不可の施設が多い。持参予定機器は面談時に確認
ビニール袋(大・小)
10枚
使用済み衣類・汚れ物の仕分け、ゴミ袋代わり、洗濯物の持ち帰りなど多用途。複数サイズあると便利
イヤホン
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音楽・テレビ・動画視聴時の同室者への配慮に必須。有線タイプは充電切れの心配がなく確実
少額の現金(小銭含む)
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自動販売機・コインランドリー・売店などで使用。多額の現金や貴重品の持ち込みは盗難・紛失のリスクがあるため避けます
貴重品は施設の金庫預かりサービスがある場合も
眼鏡・補聴器・予備電池
1
普段使っている感覚補助具がないと読書・会話・テレビ視聴が楽しめず QOL が大きく下がります。ケースと予備電池も忘れずに
ケースに氏名を記入。補聴器用電池は施設の売店に置いていない場合があるため多めに
「ご本人らしく過ごす」ための緩和ケア病棟ならではのカテゴリ。写真・音楽・信仰用品など、自宅の延長として病室を整えるアイテム。医療的物品を伴うもの(アロマ等)は施設の許可を確認
家族写真・思い出の写真
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ベッドサイドに飾ることで安心感と生きる力につながります。小型の写真立てや壁に貼れるタイプが場所を取りません
壁への画鋲・テープ類の使用可否は施設により異なる
スマホ・好きな音楽・好きな動画
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好きな音楽はリラックスや疼痛緩和の補助的効果があると報告されています(日本緩和医療学会の緩和ケアガイドライン)。思い出の曲をプレイリストにしておくと聴きやすい
オフライン再生できる状態にしておくと Wi-Fi 環境に左右されない
お気に入りのブランケット・ひざ掛け
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使い慣れた肌触りは病室という非日常空間での安心材料になります。軽くて洗える素材が扱いやすい
大型の布団・羽毛布団は感染対策やベッドメイクの都合で持ち込み不可の場合あり
本・雑誌・趣味のもの(塗り絵・手芸・パズルなど)
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体調のよい時間帯の気分転換に。集中力が続かない時期は薄い雑誌や短編集、塗り絵など細切れに楽しめるものが向きます
はさみ・カッター・針など鋭利なものは持ち込み制限あり。針を使わない手芸キットや折り紙が安全
宗教・信仰に関するもの
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お守り・数珠・聖書・経本・十字架など、心の拠り所となるものは終末期に特に大切な役割を果たします
宗教者(僧侶・神父・牧師等)の訪問を希望する場合は施設スタッフに相談を
アロマ・お気に入りの香り(使用可否要確認)
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リラックス効果が期待できますが、同室者のアレルギーや呼吸器症状に配慮が必要
火気厳禁のためキャンドル型は不可。ディフューザーや精油の使用可否は必ず施設に事前確認
ノート・レター用品
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家族へのメッセージ、気持ちの整理、日記、エンディングノートの追記などに。ACP や人生会議の内容を書き留めるのにも使えます
ボールペン・鉛筆は可、カッター類は不可
緩和ケア病棟への入院は、一般病棟の入院と異なり 主治医相談から入院日決定まで数週間〜数ヶ月 かかるのが一般的です。待機期間も含めて段階的に準備を進めましょう。
注意:待機期間中は在宅療養支援診療所による訪問診療や訪問看護を活用して自宅で過ごす選択肢もあります。期間や手続きの詳細は施設・自治体・加入保険者により異なるため、最新情報を必ず確認してください。
主治医に診療情報提供書の作成を依頼(発行1〜2週間)。並行して事前指示書・人生会議の記録を整理し、家族と内容を共有。発行に時間がかかる書類から進めると入院日までに余裕を持って揃えられます
候補施設の面談時に、アロマ・電気毛布・生花・造花など医療的物品の可否をリストで確認。差額ベッド代・寝衣レンタル費用・食事療養費などの保険外費用の見積もりも同時に依頼し、家計への影響を事前に把握します
パジャマは前開き3セット、上履きはかかとのある滑りにくいタイプを準備。肌が敏感になりやすい時期のため、低刺激・無香料の洗面用品と口腔ケア用品(誤嚥性肺炎予防に重要)を選びます
家族写真・好きな音楽のプレイリスト・宗教用品・趣味のものなど、ご本人が「これがあると安心」と感じるものを本人と対話しながら選定。終末期に大切にしたい時間の過ごし方をチェックリストに反映します
キーパーソンを1名決めて施設との窓口を一本化。緊急連絡先の優先順位・面会スケジュール・持ち物の補充担当を家族間で分担し、リストを共有することで精神的負担が偏らないよう準備を進めます
はい、緩和ケア病棟への入院には主治医からの診療情報提供書(紹介状)が必須です。日本ホスピス緩和ケア協会加盟施設の多くは、紹介状に加えて緩和ケア外来の受診や面談を経てから入院日が決まる仕組みになっています。紹介状の発行には1〜2週間かかることもあるため、入院を検討し始めたら早めに主治医に依頼しましょう。また施設ごとに対象疾患(がん・AIDS・末期心不全など)や受け入れ基準が異なるため、候補施設の受け入れ要件も並行して確認が必要です。
基本的な書類・衣類・洗面用具は一般入院と共通ですが、緩和ケア病棟では「こころの安らぎにつながるパーソナルアイテム」を持参する方が多いのが大きな違いです。家族写真、好きな音楽を入れたスマホ、使い慣れたブランケット、お守りや数珠など宗教的に大切なもの、趣味の本や塗り絵などです。多くの施設で病室を自宅のように整えることが歓迎されています。また事前指示書(リビングウィル)や人生会議の記録がある場合は、医療チームと共有するため必ず持参してください。
多くの緩和ケア病棟では寝衣・タオルのレンタルサービス(CSセット等)を日額定額で利用できます。洗濯の手間が省け、ご家族の通院負担も軽減されるため、遠方から通う場合は特におすすめです。料金体系(1日あたりの定額/使った分だけ)や内容(パジャマのみ/タオル込み/オムツ含む)は施設により異なるため、入院面談時に見積もりを確認しましょう。レンタルと持参の併用も可能な施設が多く、お気に入りのパジャマを数枚持参し不足分をレンタルする使い方もできます。
緩和ケア病棟は家族の付き添いや面会に配慮があり、家族控室・簡易ベッド・シャワー・キッチンなどを備える施設もあります。付き添う方は、ご自身の着替え・洗面用具・軽食・充電器・読書用品などを用意しましょう。24時間面会可の施設もあれば、夜間は事前申請制の施設もあります。また付き添いの食事や寝具の提供可否・費用は施設ごとに異なるため、交代要員の家族と分担スケジュールを組む前に条件を確認してください。
緩和ケア病棟入院料は健康保険が適用され、高額療養費制度の対象です。限度額適用認定証を事前に申請しておけば、窓口支払いが自己負担限度額(所得区分により異なる)までに抑えられます。ただし差額ベッド代(個室料)、食事療養費の標準負担額、寝衣・タオルのレンタル代、日用品費などの保険外費用が別途かかり、これらは施設により幅があります。入院前に面談で概算見積もりをもらうと安心です。費用の詳細や制度は医療制度改定で変わる可能性があるため、最新情報は加入している健康保険(協会けんぽ・国保・組合健保等)と入院先に直接確認してください。
多くの施設で持ち込み制限があるのは、はさみ・カッター・ナイフなどの鋭利物、ライター・マッチなどの火気、電気ポット・電気毛布・電気ストーブなどの高電力機器です。安全・感染対策・火災予防の観点から設定されており、施設ごとに基準が異なります。生花は免疫力低下への配慮で禁止されている施設が多く、造花や鉢植え不可のケースもあります。アロマディフューザー・電気シェーバー・加湿器などは施設により可否が分かれるため、持参予定のものは必ず面談時にリストを見せて確認しましょう。
一般的な流れは「主治医への相談 → 施設の情報収集・見学 → 緩和ケア外来受診または面談 → 入院契約 → 入院日決定」です。日本ホスピス緩和ケア協会の加盟施設は全国に450以上ありますが、地域や施設により空床状況が大きく異なり、面談から入院まで数日〜数ヶ月の幅があります。人気施設では数週間以上待機することも珍しくないため、候補を1施設に絞らず複数と並行して面談を進める方が現実的です。待機中は在宅療養支援診療所による訪問診療や訪問看護を利用して自宅で過ごす方法もあります。
事前指示書(リビングウィル)は、延命治療・心肺蘇生・人工呼吸・鎮静などについての本人の希望を書面で残すものです。厚生労働省が推進する「人生会議」(ACP/アドバンス・ケア・プランニング)は、本人・家族・医療者が繰り返し話し合って意思決定を支えるプロセスです。日本医師会や各自治体が雛形を公開しており、自治体のエンディングノート配布事業を利用できる場合もあります。入院時にはコピーを持参して医療チームと共有し、原本は自宅で保管するのが一般的。内容は体調や気持ちの変化で書き換えて構わないため、家族と定期的に見直しましょう。
一般の入院リストにはない「事前指示書(リビングウィル)」「ACP(人生会議)の記録」など、緩和ケア病棟で医療チームに本人の意思を伝えるための書類を、発行・準備のタイミングとあわせて整理しています。
家族写真・好きな音楽・宗教用品・使い慣れたブランケットなど、緩和ケア病棟ならではのパーソナルアイテムを独立カテゴリで列挙。医療的物品の可否や持ち込み制限の注意事項も各アイテムの notes で確認できます。
紹介状の依頼は本人・書類準備は同居家族・衣類の買い物は遠方の家族、といった分担がしやすいチェックリスト構造。面談・契約・入院と複数回の来訪が必要な準備期間中も、進捗を共有しながら進められます。